No.0180
アーティストとして生きていくということ
最近常に考えているのが、アーティストが生計を立てるにはどうすれば良いか、ということです。日本ではアーティストというと主に美術家やミュージシャンを指しますが、私が考えるアーティストは画家、彫刻家、音楽家、写真家、文筆家、劇作家、俳優、舞踏家、等あらゆる芸術分野を含みます。
調べれば調べる程、どういう訳か日本ではこれらの専門家として生きていくことが極めて難しいと分かります。
例えばアメリカ等では、プロの芸術家が沢山存在していて、他の職業同様に芸術家になる為のハウツー本なども出版されているそうです。
一番大きな違いは、マーケットが形成されているかどうか、というところのようですが・・・。
私の父は日曜画家で、洋画家 佐々木壮六氏のアトリエで絵を学び、展覧会に出展したり、余暇には常にスケッチブックを持ち歩き、写生をしていました。
自然私も幼少時から絵に親しみ、幼稚園児の頃からクレヨンや色鉛筆、水彩まで使って絵を描いていました。
賞を取ったこともありますし、中学生位からは従兄の影響でCGに手を出したりもしました。
初めて油絵を描いたのは、高校の美術部の時。
私の通っていた高校は美術教育が盛んで、芸大を目指していた子も何人かいたのですが、私はそこまで本格的に絵を学んでいた訳ではないので、美大には進まず、和光大学の芸術学科に進学しました。
大学では針生一郎先生、松枝到先生のゼミで美学や文化人類学を学びつつ、白石昌夫先生・佐藤泰生先生の実技のゼミで油彩や版画、石膏、テラコッタ、FRPなどの素材を使った造形を学びました。
人形を創り始めたのは、天野可淡さんの人形写真集を見たのがきっかけでした。
創り始めてすぐグループ展で発表を行い、販売もするようになりましたが、それで生活して行こうとは思いもよりませんでした。
周囲には、人形作家をはじめとするアーティストの友人知人が多く、7割くらいは何かしらの創作活動に携わっているような環境ですが、それを生活手段にしている人は数%にも満たないかもしれません。
人形作家で言えば、相当名前の知られている作家でも主たる収入源は教室の運営、それ以外は他に仕事を持っている人がほとんどです。
プロで食べているアーティストなどでも常に困窮していたり、配偶者の収入に頼っていたり、アルバイトをしていたり・・・。
家賃収入があったり実家が裕福だったりというごく僅かな例外を除けば、制作を続ける為に苦労している人ばかり。
私が人形作家の木村龍氏の教室で講師をしていた頃、生徒さんで心を病んで生活保護を受けていた子がいました。
彼女には複雑な家庭事情があったようで、かつては弟を養う為に体を壊す程働き詰めだったようです。
私に「アーティストは生活保護を受けるのがお勧め」と言っていたのを思い出します。
才能溢れるアーティストだった彼女はしかし、若くして亡くなってしまいました。
生活保護を受ける他ないほどに心身を害するのが得策とは、決して言えないでしょう。
社会不適合者に向ける世間の目は冷たいですが、世の中にはアーティストになる以外にうまく生きる術を持たない人というのも存在するのです。
日本が絶望的な状況なのであれば、海外に出て行くのも一つの方法かも知れません。
しかし折角この国に暮らしているのだから、ここで何か出来ることがないか、その試みを示していければと思っております。
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