Rosa†Antica(ロサ・アンティカ) - アンティーク・レトロ雑貨店店主、女優、人形作家、由良瓏砂のブログ

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Tue
2019

No.0254

ほんとうのさいわい

チェロ奏者の青月泰山くんとは、もう結構長いお付き合いになります。
最初は黒色すみれのさっちゃんを介して知り合ったのだったかしら。
私と永井幽蘭ちゃん、常川博行さんで始めたユニット、「電氣猫フレーメン」に参加して頂いたこともあります。



最近では紅白歌合戦での椎名林檎さんのバックで演奏したりと、あちこちで活躍されています。

去年くらいから、泰山くんと、やはり長いお付き合いであるカウンターテナーの湯澤幸一郎さん、アコーディオン奏者のえびさわなおきさんの3人でやっているユニット「青山辺境伯」のライブにお誘い頂き、お伺いすることが多くなりました。
つい先月、えびさわさんからお誘いが届いた、翌日くらいのこと。
ポストに入っていた、普段は捨ててしまうタウン誌をふと持ち帰り、開いてみると、泰山くんの写真が目に飛び込んできました。
見ると、七夕の前日の7月6日、コスモプラネタリウム渋谷でチェロの演奏会があるというのです。

私たちの営業している《哲学者の薔薇園》では、イベントの司会などを引き受けて下さっているカヲルさんのプラネタリウム投影機をお借りして、度々プラネタリウムイベントを開催しています。
プラネタリウムの魅力を力説するカヲルさんの影響で、私と相方も去年サンシャインのプラネタリウムを訪れたりもしました。
コスモプラネタリウム渋谷は、私のバイト先のすぐ近くなので、去年からずっと気になっている場所だったのですが、今まで行く機会を見つけられずにいました。
願ってもないチャンス、と思いました。

青山辺境伯のライブは、今回は物語仕立てになっていて、湯澤さんの朗読に乗せて曲が奏でられ、いつにも増して魅惑的でした。
湯澤さん、年増女や老婆のセリフが上手すぎます。
さすがマリアさ・・・おっと。
長年の夢だったプラネタリウムでのコンサートが実現して嬉しい、という泰山くんの話によれば、七夕は一年で一番、プラネタリウムのお客が多い日なのだとか。
だから特に自分が呼ばなくてもお客さんは来る筈だけど、周りを見回して知った顔が誰も居ないと寂しいので、是非来て下さい、とのことでした。

プラネタリウム演奏会「セロと七夕の夜」当日。
プラネタリウムの空は、昼の3時くらいから始まりました。
周囲には宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」の町並みをイメージしたというノスタルジックな町の風景が。
やがて、まるでアラビアンナイトの王子様のような、胸元に飾り石のついた長衣姿の泰山くんが登場。
オーケストラ音源をバックにしたチェロの演奏が始まると、空は太陽がどんどん移動して沈んでいき、下限の月の残る空に、段々と星々が見え始めました。
解説員さんによる夏の星座のお話。お馴染みギリシア神話のお話です。
でも、そういえば宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」に出てくる蠍の話は、ギリシア神話のお話ではありません。
あれは、賢治の創作なのでしょうか。

泰山くんの曲のうち「南十字星の虚孔/ゼロ」という曲は、「銀河鉄道の夜」の朗読を交えて演奏されました。
そういえば、以前泰山くんの「セロ弾きのゴーシュ」の朗読を聞いたこともあったっけ。
「銀河鉄道の夜」も、《哲学者の薔薇園》が武蔵小山TARUHOにあった頃、相方と共に朗読したことのある、思い出深い話です。
「ほんとうのさいわいは一体何だろう。」
その言葉に、はっとしました。

ほんとうの幸福とは何か。
それは賢治の蠍のように、自分が犠牲になって皆を助けるという、キリストに見られるような自己犠牲の精神からくるものではないでしょうか。

「世界幸福度報告」の要素の中で、日本が特に順位が低いのが「寛容さ」(92位)だと言います。
人に慈善を施すことが、自らの幸福に結びつく、ということが、日本人の感覚にそぐわないのだとしたら、残念なことです。

最後の曲「握る指から砂が落つように/アルファルド」
この曲を作る前に泰山くんは、一人モロッコの砂漠を旅したそうです。
満点の星空の下空気が澄み渡る中、砂漠へ消えていった星の王子様やアルチュール・ランボーの孤独と自らを重ね合わせたという泰山くん。
孤独の果てに生み出された至純の音楽が、胸に染み渡るような思いを味わった夜でした。

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