Rosa†Antica(ロサ・アンティカ) - アンティーク・レトロ雑貨店店主、女優、人形作家、由良瓏砂のブログ

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09

30

23:50
Mon
2019

No.0269

《哲学者の薔薇園》オカルティズム講座第五回「錬金術―精神の変容―」レポート

9月20日(金)は第五回目を迎えたオカルティズム講座。メイン講師は私で、テーマは「錬金術」でした。
錬金術は、オカルティズムの中でも特に私の思い入れが深いテーマで、今までも何度もパフォーマンスのモチーフなどに用いています。

まず、特製ドリンクのローズミルクティをお出しします。
ニコラ・フラメルの 『象形寓意図の書』に描かれた、薔薇園の中央の洞のある樫の木から流れ出る白い水、をイメージして作りました。
ローズシロップで甘味をつけ、アイスで提供。

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自己紹介を兼ね、私の主催している演劇ユニットMONT★SUCHTで上演した演目を紹介。
MONT★SUCHTの錬金術をモチーフにした演目には、以下のようなものがあります。

 第2回公演『De Profundis』 ジル・ド・レーとジャンヌ・ダルク、フランソワ・プレラーティの物語
 第11回公演『沈黙の書~太陽と月の結婚』 ガブリティウスとベイアの聖婚
 第14回公演『沈黙の書~ペサハ、十の厄災』 旧約聖書を題材にした推理もの
 第16回公演 『夢見者たちの領域 2.1/2.2』 カフェイベント「RosengartenⅠ」での、アパレルブランド、massaging capsuleとのコラボのパフォーマンスファッションショー。


『沈黙の書~太陽と月の結婚』。井の頭公園で開催された、虚飾集団廻天百眼主催イベント『黒色サロス』にて上演。 

渋谷ルデコで開催したイベント「Rosengarten」が、その後営業することになるアートサロンカフェ《哲学者の薔薇園》の前身となっています。
「哲学者の薔薇園」は、ユングが『転移の心理学』で紹介している、錬金術の書物より命名しました。

私が描いた「哲学者の薔薇園」と、「大いなる作業」の板絵も披露。

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さて、ここからが本題です。
まずは、錬金術の定義です。

錬金術とは、狭義では化学的な手法で卑金属を金などの貴金属に精錬しようとする試み。
広義では、様々な物質や、人間の肉体、精神、魂を完全な存在=神に近づけようとする試み。
アラビア語の「エル・キミア」(el-kimia)接頭語el+キミアの語根はギリシャ語の溶解を意味する「キマ」もしくは黒い土地を意味する「ケム」(エジプトを指す)
錬金術の過程は「マグヌム・オプス(大いなる作業)」と呼ばれ、象徴的な図版などで記される。
磁器、蒸留技術、火薬、硝酸、硫酸、塩酸、王水の発明は錬金術の実験の中で生まれた。現代の化学の礎となる。

続けて、錬金術の歴史。
著名な錬金術師や錬金術書を、スライドでご紹介しました。

そして、錬金術の過程をざっくりと説明。
 「マグヌム・オプス(大いなる作業)」には湿潤法と乾式法があり、湿潤法は材料を「哲学者の卵」と呼ばれるフラスコに入れて密閉し、「アタノール」という炉で加熱した。
黒化(ニグレド)、 白化(アルベド)、翠化(ウィリディタス)、黄化(キトリニタス)、 赤化(ルベド)の五段階を経て賢者の石(エリクサー、Azoth)を精製する。

ラムスプリングの錬金術書『賢者の石について』の抜粋を朗読。

最後に、これがメインになる予定でしたが、『転移の心理学』を参照しつつ、受講者の皆様と、『哲学者の薔薇園』の図版を順番に読み解いていく。

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以上が、当初予定していた当日の流れでした。
ところが、当日になってトラブルが。
相方が作ってくれたスライドが、プロジェクターから流れないのです。

開始時間になったので、スライド無しで板書で始めましたが、長南さんの的確なサポートで、どうにか投影できました。

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そんなこともあった為か、予定時間より大分押してしまい、『哲学者の薔薇園』の図版解読に30分くらいを裂く予定が、10分くらいしか時間が無くなってしまいました。
でも、大多数が図像学にあまり馴染みが無いせいか、解読は覚束ない感じだったので、ちょうど良かったかも・・・。

受講者の方からの、参考文献の一覧が欲しい、とのリクエストで、後日改めて錬金術関連の文献をまとめてみたのですが、切りが無いので適当なところで一区切りつけました。

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準備がとても大変でしたが楽しかったので、機会があったらまたやりたいです。

次回10/18(金)のテーマは「西洋占星術」。
いつもアシスタントを勤めて下さっている長南さんが、メイン講師となります。
恐らく実践もあるかと思います。
どうぞお気軽に、ご参加下さいませ。

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09

24

23:52
Tue
2019

No.0268

波打際演奏会

ピアニストでシンガーソングライターの永井幽蘭ちゃんが、創作ユニット「ガラスの小鳥社」さんと一緒に作ったCD「波打際」。
発売記念コンサートが去年予定されていたのですが、幽蘭ちゃんの心臓の不具合が見つかり、手術することになって、演奏会は延期になり、イベント自体は、小鳥社さんのトークショーという形で行われました。
4月の幽蘭ちゃんの手術後、術後の経過も良好とのことで、5月に《哲学者の薔薇園》での波打際演奏会リベンジを打診して頂きました。
願ってもないお申し出だったので、もちろん二つ返事でOKし、祝日と重なる9月16日に開催することになりました。

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実現に向けて着実に準備を進めていく中で、CDのジャケットにも使われた小鳥社 鳥居椿ちゃんのイラストを再現したいね、という話が出て、私が人形を作りましょうか?と言っていたのですが、全くそんな時間が取れないまま、気づくと演奏会も間近に迫っていました。
詳細が決定し、DMを作成し告知を開始したのが8月半ば。
茶会記の定員が40名程なので、満席になることは当初から危ぶまれていました。
予約開始から僅か2週間程で満席となり、予定通り、予約を締め切り。
さて、こうなると不安なのは当日のオペレーションです。
何しろ私と相方の悠雅シェフの2名で対応しなければなりません。
メニューを絞って対応することは考えていましたが、やはり演奏会直前が混み合いそうなので、フードメニューは落ち着いている時のみお出しすることにしました。

小鳥社さんと幽蘭ちゃんに、オリジナルドリンクのリクエストを頂いていたので、それも考えないといけません。
昨年のイベントでは、曲のタイトルから命名した、海のように蒼いカクテルの「ローレライ」と、ターコイズブルーとレモンイエローのグラデーションが美しいドリンク「月の雫 星の涙」を出したとのこと。
あえて青系を避けてみようと思い、まずはネーミングを考えます。
アルコールのカクテルは「人魚姫」から「人魚姫の涙」、ノンアルコールドリンクは「うたかた」から「泡沫の夢」と、名前も少し捻ってみました。
悠雅シェフのアイデアで、「人魚姫の涙」は、ジンとコアントロー、レモンジュースを中心にしたカクテルに、パール粉末を入れることに。

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「泡沫の夢」は、以前に出していた「睡蓮」というマロウとグレープフルーツジュースをアレンジ。パープルとイエローのグラデーションのソフトドリンクになりました。

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フードメニューは、お客様からリクエストのあったチリコンカンです。

椿ちゃんの絵を再現する為の木箱を皆で探していたのですが、なかなか思うものが手頃な価格で見つからず、椿ちゃんのご主人の拓さんが作って下さることに。
私は木箱の上に腰を掛けて、ゆきめちゃんが作ったボトルメッセージの形をとった詩を朗読するという大役を仰せつかりました。
詩は、演奏する曲の説明にもなっていて、半分はサウンドディレクションの田島健治氏こと]k[さんが朗読したものの録音を流します。
まさか人形ではなく、自分自身が絵の中に入り込むことになるとは!!
そこで、絵の中の少女が着ているようなデザインの、セーラ服を探し始めました。
ロリータブランドのジェーンマープルにあるようなデザインのイメージだったのですが、これまたなかなか見当たりません。

そうしているうち、幽蘭ちゃんから「第二部をやろうと思って新曲を作ったので、曲の合間に朗読をお願いしたい」と打診されました。
相談の結果、以前に「電氣猫フレーメン」でやったことのある『眠レヌ姫の童話』をやることになりました。
電氣猫フレーメンは、幽蘭ちゃんと私、常川博行さん、黒色すみれのさっちゃんなどで活動していた、音楽と朗読のユニットです。
『眠レヌ姫の童話』は、幽蘭ちゃんの曲を演奏する為に、曲を繋ぐ部分を私が物語仕立てにしたもので、もう一つ『トラウマ男爵の童話』というのも作っていましたが、そちらはまだ上演したことがありません。
曲が5曲と、それを繋ぐ朗読、そしてアンコールが1曲という構成です。
殆どの曲には、朗読が入ります。しかし、当日のリハーサルまで、合わせることができません。
また、私も色々と忙しく、自主練の時間もほとんど取れないままで、気ばかり焦る毎日。

本番3日前に、衣装を探しにブランド古着のお店に。
そこで、見つけたのです!色こそ欲しかった白ではなくベージュですが、形がほとんど絵そのままのデザインの、ロリータブランド・セラフィムのワンピース!
セラフィムは小鳥社さんとも縁の深いブランドなので、このワンピースを描いたのかな?と思いながら、即購入。
後で聞いたら、まさに「波打際」に合わせて発売されたワンピースだったのだそう。

小鳥社の日香里ちゃんによる、波打際ホテルの点描画が仕上がったのが、ちょうど一週間ほど前。
そこで、第二部『眠れレヌ姫の物語』は、ホテルで開催される出し物という設定にしました。
幽蘭ちゃんが、導入部分のお手紙を書いてくれて、これも]k[さんが朗読し録音してくれました。
物販用には、ホテルの鍵も。

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そして前日。持って行くものを急いで掻き集めました。
絵の中にあるような瓶に珊瑚を詰め、リボンを結びました。
麦わら帽子にも青いリボンを巻き、部屋に飾っていた鳥籠や、押入れの帽子箱を綺麗にして、背中に背負う羽と共に荷造りしました。
ステンドグラスのランタンは、第一部の冒頭『ことば遊び』で、椿ちゃんと日香里ちゃんが持って出て来る為のもの。
これも、幽蘭ちゃんのアイデアです。

当日は開店時間より1時間早い14時集合で、会場設営とリハーサルを行う予定でしたが、やはりサウンドチェックやスクリーンの設営など時間が掛かり、リハーサルできないまま開店しました。
カフェスペースの壁と棚には、ガラスの小鳥社さんの素敵な絵の展示と物販がディスプレイされ、いつもの茶会記とは一味も二味も違った雰囲気です。

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演奏会の時間以外にも、小鳥社さんの展示と物販を見て頂けることにしたので、お客様が次々にいらっしゃいます。
何とか隙をみて、リハーサルを2部を中心に行いました。
リハーサルではまだ朗読が覚束なかったのですが、一度でもやってみると安心感が違います。
拓さんが作られた木箱も、理想的なサイズ!
ゆきめちゃんは、絵の少女が着けているのとそっくりな、巻貝のヘアコームを作ってきてくれました。

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急いでリハを終わらせ、お客様の受付とオーダーを捌き、皆のスタンバイを確認して、いよいよ開演です。
椿ちゃんの絵が投影されているスクリーンを背景に、木箱に腰を掛けました。
幽蘭ちゃんは、自作の貝の簪を挿し、羽織を着て、乙姫様のような雰囲気。
演奏と唄は、ブランクを感じさせることもなく、流石としかいいようのないものでした。
歌姫の復活を喜ぶお客様の反応もとても温かくて、本当に素晴らしい演奏会でした。

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第一部終了後、オーダーなどに対応し、一通り落ち着いたら、第二部のスタートです。
残ったお客様とひっそりと楽しむ感じでできればいいかな、と思っていたのですが、帰られる方が殆どいらっしゃらなかったのは、嬉しい誤算でした。
茶会記での営業時の衣装を私はモノクロと決めているのですが、眠レヌ姫の童話は元々クリスマスのお話で、赤と白の色彩が印象的なので、ドレスもそれに合わせて赤と白にすることに。
お姫様なので、前に幽蘭ちゃんにお揃いで作ってもらった、ミニ王冠のヘッドドレスを着けました。
第二部では朗読の他に、歌うパートもあったのですが、呼吸はぴったりだったと思います。
懸念事項だった「アルラウネ」という曲の早口の朗読も、何とか噛まずに読むことができました。

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《哲学者の薔薇園》は、私が素敵だと思うものを、いらして下さる皆さんと共有したいという一念で続けている場所なのですが、今回ほど理想的に機能したことはなかったと思います。
幽蘭ちゃんとガラスの小鳥社さん、花森ゆきめちゃん、]k[さんには、こんな素敵な機会を下さったことにお礼のしようもありません。
今回ご来場下さった全ての方と、関わって下さった全ての方に、心からの感謝を捧げます。
これからも、素敵な催しを開催してゆけたらいいな、と思います。

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09

18

23:52
Wed
2019

No.0267

Toru Nogawa×清水真理 「Alchemy theater― 錬金術の劇場―」

私の長年の友人であり、絵画のモデルを勤めさせて頂いている画家のToru Nogawa氏の二人展が、8月31日(土)~ 9月10日(火)有楽町のスパンアートギャラリーにて開催されました。

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Nogawa氏は毎年スパンアートギャラリーで、個展と二人展を交互に開催していて、今年はやはり私の古くからの友人である清水真理氏との二人展。
今年の展覧会タイトルは、 「Alchemy theater― 錬金術の劇場―」。
ご存知の方も多いと思いますが、スパンアートギャラリーは日本の錬金術研究の第一人者である独文学者、評論家の種村季弘氏のご子息である種村品麻氏が経営しているギャラリーですので、ぴったりのテーマだと思いました。
毎年、会期中にNogawa氏のメインモデルであるNaoko Shibuyaさんがピアノコンサートを開催し、私も朗読でご一緒させて頂いたこともあるのですが、最近はやはりモデルの一人である、DER ZIBETのISSAY氏が歌うことが多いように思います。
今年は9月7日(土) にNaoko Shibuya Salon Concert vol.9 『Le cinema ''ル・シネマ''』が開催されました。
例年通り、私も会場スタッフとして相方と共に伺いました。
いつもスタッフをご一緒するのは、同じくモデルの一人、オルガさん。
設営の前に、一度展示を拝見。
Nogawa氏の私を描いて下さった新作「柔らかな刻」を生で拝見できて感激!!

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昨年、Nogawa氏の開催している絵画教室のモデルをやった時のもので、自作の人形「マナセ」を抱いている姿を描いて下さったのが、何よりも嬉しかったのです。
皮膚や布の質感の滑らかさといい、表現力に益々磨きが掛かっていて、本当に素晴らしかったです。
もちろん、他の作品もそれぞれ素晴らしく、中でも奥の大きなISSAY氏とNaokoさんの絵は、暖色系の布の大胆な配色と人物の黒と赤の衣装が対照的で、インパクトがありました。
この絵の前でお二人が演奏するので、まるで絵から抜け出してきたような印象を与えるのです。
清水真理さんのお人形は、四大元素をイメージしたお人形たちの、衣装や髪の微妙な色彩が美しく、儚げでした。
ヘルマフロディトスなど、錬金術の象徴といえるお人形を作られているのもさすがです。

電子ピアノと椅子を配置し、会場設営が終わってリハーサルがスタート。
Naokoさんのピアノは19世紀フランスの印象で、とにかく優美。うっとりするような旋律です。
一方、ISSAYさんは一見クールながら、その実とても情熱的。声量が凄くて、キャパ50名程のスパンアートギャラリーでは小さすぎるくらい。
なのにご本人は「普段マイク通してるから後ろまで聞こえるか不安」と仰っていたそうで・・・。
ちなみに本番では、電子ピアノの音を圧倒していました。
ISSAY氏は筋肉のつき方がとても美しかったのでつい「何かトレーニングされてるのですか?」と尋ねてみたところ、ライブくらいで何もやっていない、とのお返事でした。
私は仕事後に直接来たのですが、二人展のお祝いでもあるので華やかな格好の方が良いかと、ドレスを持ってきていたので、着替えさせて頂きました。
Nogawa氏の絵には青系の色が多用されているので、ドレスも淡いながら水色のものにしてみました。

やがて開場時間も近くなり、お客様が並び始めました。
予定より、少し遅れてオープン。
私より相方の方が、受付の手順をちゃんと覚えていたという・・・。
立ち見も出てぎゅうぎゅうの状態で、コンサートがスタートしました。
前半はNaokoさんのピアノソロ、夢心地になったところで、ISSAYさん登場。
端正ながら情熱を秘めた美声を聞かせて下さいました。
終了後のレセプションパーティでは、顔見知りの方々とお話。
ISSAYさんのお客様は皆様優しくてフレンドリーで、私まで差し入れを頂いてしまったり、写真を撮って頂いたり、話し掛けて頂いて嬉しかったです。
一度に沢山の方とお会いする為、なかなか覚え切れなかったりで申し訳ないです。

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スパンアートギャラリーは建物の老朽化の為、現在の場所での営業は今年限りになるようです。
来年の展示とコンサートはどんな場所で開催されることになるのか、今から楽しみです。

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09

09

23:54
Mon
2019

No.0266

H・P・ラヴクラフト聖誕祭 ~『ネクロスコープ』刊行記念、ブライアン・ラムレイのクトゥルー神話世界~

阿佐ヶ谷ロフトAにて毎年開催されている「ラヴクラフト聖誕祭」は、クトゥルー神話研究家の森瀬繚氏と、作家・ゲームクリエイターの朱鷺田祐介氏が主催するイベントです。
調べてみると、第一回開催は2012年。
その翌年の2013年3月15日から、命日を偲ぶ「邪神忌」も開始。
毎回、クトゥルー神話に縁のあるゲストを迎えて開催されています。
と言っても、ゆるいラヴクラフティアンである私は今までどちらも行ったことがなく、《哲学者の薔薇園》の常連のクトゥルフ勢の皆様のお話を聞くのみでした。
でも今回は、ブライアン・ラムレイ『ネクロスコープ』刊行記念ということで、薔薇園常連の一人である鵺さんこと、翻訳家の夏来健次氏が登壇するというのです。
しかし夏来氏、晴れがましい場は大の苦手という控え目な性格。
以前に豚蛇さんのクトゥルフ同人誌『玉石混淆』vol.3出版記念イベントを薔薇園で開催した際も、トークゲストの一人だというのに結局客席側から動かなかったくらいです。
一人では心許ないというので、同じく控え目だけどもうちょっと喋ることもある豚蛇さんを巻き添えにしてしまったとのこと。
薔薇園の常連お二人が登壇するなら行かない訳にはいくまいと、予約を入れたのですが、その前の予定の都合で残念ながらスタートからの参加は難しく、途中から伺うことになりました。

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ロフト系列のお店は何度も足を運んだことがありますが、阿佐ヶ谷ロフトAは初めてです。
着いたのはちょうど三部構成のうち一部目が終わった休憩時間の時。
ステージには森瀬、朱鷺田両氏に挟まれて、鵺さん豚蛇さんの姿が。
ステージ背後のスクリーンには「ラムレイの神話世界」ということで、神話生物の名前がずらりと並んでいます。
顔馴染みの皆さんは、クトゥルフイベントの時は大抵そうであるように、最前列に陣取っています。
休憩時間には物販でラムレイの本などを購入する方も多いようで、鵺さんはサインにかかりきりです。
何故か可愛らしいプーさんみたいな黄色いクマを象ったケーキが置かれています。
が、下の方の首の切り口?は赤く染まっています・・・。
後で森瀬さんのツイートを拝見したところ、グリーンランド西部で崇拝され、クトゥルーと同一視されるトルンガースクが、熊の姿をしているのだとか。
んー、ミ=ゴが雪男って言われているようなものかな?

この日の限定メニューは「本日の蜂蜜酒 チョーサーミード」「インスマス名物 白身魚の揚げ物」「絡み合う触手」でしたがご飯を食べる予定はなかったので、いつもならコーヒーを頼むところですが、この時はちょうどオカルティズム講座用の茶外茶の候補、コーン茶がメニューにあったので、頼んでみました。
コーン茶は美味しいとの噂通り、ほんのりポップコーン風味の甘みのあるお茶で、飲みやすかったです。

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そうしているうちに第二部が開始。
背景のスクリーンに挙がっている名前の生物たちを、豚蛇さんが解説していきます。
森瀬さん朱鷺田さんはとにかく弁が立つのですが、鵺さんなど振られないと本当に喋りません。
そこが却って、大御所らしさを醸し出していました。

豚蛇さんは、作品内のことで疑問がありラムレイに直接問合せて、返事をもらったそうなのですが、どうも日本に紹介される過程で色々齟齬が生じたりしているらしく、、色々聞いてもラムレイからは「そんなのは知らない」と言われることもしばしばだったそう。
ラムレイの奥さんから、レイ・チャールズの日本公演版のレコードを探して欲しいと言われ、見つけて送ったらお礼にサイン本をもらったなどのエピソードも紹介されました。
ラムレイは短編に定評がありますが、本人によれば長編に本分がある、との謂。
二部と三部の間の休憩で、私も「ネクロスコープ」上下を購入し、鵺さんいや夏来先生にサインして頂きました。

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最後には『ネクロスコープ』挿画の海野なまこさん新刊や、近日出版予定の森瀬さんの『未知なるカダスを夢に求めて』(ラヴクラフトで私が一番好きな作品!)の告知なども。
ドリームランドの地図にわくわくしました。
夏来氏はホームズ×クトゥルーもののアンソロジーの翻訳中だそうです。
そんなこんなで、イベントは穏やかに終了。

ちなみに『ネクロスコープ』、今下巻の1/3程まで読み進めているのですが、なんとまだクトゥルー要素が出てきていません!
かなり読みやすいので、読み終わったらラムレイの旧作にも手を出してみようかなと思っております。
夏来氏の翻訳書には、ラムレイなどクトゥルフものの他に、 ロバート・ブロック『サイコ』、スティーヴンスン『ジキル博士とハイド氏』 (創元推理文庫)などもあります。
見かけたら是非、お手に取ってみて下さいね!

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09

04

22:04
Wed
2019

No.0265

《哲学者の薔薇園》オカルティズム講座第四回「儀式的音楽」レポート

少し時間が経ってしまいましたが、8/16(金)に宇田川岳夫氏をゲストにお招きして開催した、オカルティズム講座第四回のレポートです。
宇田川さんは私が参加していたgROTTESCO△sEPHIRAHや主催しているMONT★SUCHTの公演観にいらして下さったり、というお付き合いはありましたが、主催されている隔月開催のDJイベント「盤魔殿」へは、お伺いする機会がないままでした。
4月に盤魔殿のお知らせを頂いて、初めて全容を知ったのですが、数秘術や魔術、シャーマニズムなどの研究者や実践家が大勢参戦するらしく、しかも会場が家から近い!
伺ってみたところ、人の詰めかけた会場ではDJイベントだというのに儀式が行われており、混沌としたエネルギーが渦巻いていてかなりカオティックな空間になっていました。
これは是非講師にお願いしたい、とお声がけし、過去に行った講演をまとめて、「魔術的音楽」のテーマで講義を行って頂くことになりました。

前もってお送り頂いた講義資料が、なんとスライド140枚分ほど。
これ全部を90分で喋るのは難しいのでは、と思ったのですが、とりあえず縮小してプリントアウト。
参加者にも配布予定だったとのことですが、さすがに膨大になってしまうので、後で希望者にpdfファイルでお送りすることにしました。

今回は宇田川さん頼りで、私は大してやることがなさそうですが、とりあえず当日お出しする飲み物を選定。
幻覚作用のあるお茶、といきたいところですが、流石に何かあったら困るので、茶外茶から探します。
とにかくたくさんあるので、入手しやすくて美味しそうなもの、ということで黒豆茶と玉蜀黍茶をピックアップ。
スーパーで黒豆を発見し購入。玉蜀黍は、ポップコーンの元として乾燥したものが売られています。
焙煎したら全部ポップコーンになるんじゃないか?と思い、今回は黒豆茶にすることにしました。



さて当日。飛び入りの方も入れて、程好く満席。
この日は何とホームグラウンドである渋谷DJ BAR EdgeEndでの盤魔殿Vol.27の開催日と重なっており、宇田川さんは講座終了次第そちらへ向かうとのこと。
前回「魔女術」でもご紹介した、ネオ・ペイガニズムあたりの紹介から入ります。
カリフォルニアで花開いたヒッピー・ムーブメントには、音楽関係者のみならず身体変工者ファキール・ムサファーなどもいる。
スロッビング・グリッスル、サイキックTVの中心人物であるジェネシス・P・オリッジが、奥さんと同一化する為に整形手術をしたという逸話も紹介されます。
「象徴学体系」の著者マンリー・P・ホールも周辺人物の一人で、彼の弟子にヤホア13を設立したFather Yodもいるとのこと。
異郷復興運動はハイペルボーリアを理想郷とするとなると、クトゥルフ神話とも繋がるのか?ちょっと気になります。

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魔術の系譜ということで、イタリアの思想家ジュリア・エボラが紹介しているクレメルツの話。
エボラはフランスの伝統主義者ルネ・ゲノンの影響を受けているそうです。
ゲノンも第一回で軽く触れましたが、私も気になりながらまだ読めていない思想家です。
共産主義グループ赤い旅団がクレメルツを復刻したとのことで、今後の研究が待たれます。

「ヒトラーの女祭司」サヴィトリ・デヴィから影響を受けた、メンバーを殺害したブラックメタルのミュージシャン、ヴァルグ・ヴィーケネスについて。
アレクサンドル・ドゥーギンの新ユーラシア主義。
などなど、一つ一つを取り上げても一回の講座内容に匹敵する程のボリュームでした。
八幡書店の武田崇元氏が編集長を勤めていた「地球ロマン」という雑誌の紹介もありました。
執筆者は由良君美、四方田犬彦、武邑光裕、荒俣宏など錚々たる顔ぶれです。
元ZELDAの小嶋さちほ氏は、なんと今カタカムナを布教する為の音源を作成しているとか。
最後に、日本のオカルトシーンの要となる場所が静岡、群馬、京都にあるというお話。
カレント93のメンバーと親交のある、鈴木大治氏の経営する「あべの古書店」が静岡市にあるのだそうです。
鈴木氏とKONORI氏の活動していた劇団のお話などもあり、非常に興味深かったです。

最後の最後で、私がYBO2の故・北村昌士氏に引き合わせてもらった、Neither/Neither Worldについて紹介。
こちらの記事もご参照下さい。

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終了後、急いで盤魔殿へと向かう宇田川さん。
宇田川さんには、これからも《哲学者の薔薇園》でイベントを開催して頂ければなと思っております。
盤魔殿も、機会があれば是非行ってみてください!

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そして次回9/20(金)のオカルティズム講座第五回、テーマは「錬金術―精神の変容―」
《哲学者の薔薇園》のコンセプトの根底となっている学問でもあります。
「相反物の一致」という構造を内包する学問である錬金術の、歴史と思想、象徴体系、その成果などについてご紹介します。
お申し込みはこちらからどうぞ。

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告知画像:Toru Nogawa[Le Requiem] カンバスに油彩

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