Rosa†Antica(ロサ・アンティカ) - アンティーク・レトロ雑貨店店主、女優、人形作家、由良瓏砂のブログ

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Sun
2017

No.0113

パリの想い出・後編

2回目のパリ旅行は、パリに遊学していた演劇関係の友人の招きに応じてのことでした。
その時私には明確な目的地がありました。パリのパサージュ、ギャルリ・ヴェロ=ドダ にある、ロベール・カピア氏の人形店です。
大学で私は針生一郎先生と松枝到先生のゼミを受講していました。美術批評に社会的な視点を取り入れた評論家として知られる針生先生は、ユダヤ人としてナチスに追われながら、政治の耽美家に対して芸術の政治化を唱えたヴァルター・ベンヤミンを授業でもよく取り上げていました。
そのベンヤミンが唱えた「パサージュ論」によれば、パサージュとは通過儀礼の場であり冥界への通路でもあり、19世紀的な事物が集積するファンタスマゴリー(幻像)でありました。
そんな、夢の中のような場所に佇む人形店!
元映画俳優であるカピア氏の店では、遊びに来たカトリーヌ・ド・ヌーヴが店番をすることもあったのだとか。
友人と共に訪れたヴェロ=ドダ の片隅に、そのお店はありました。カピア氏の喋る言葉を友人が訳してくれましたが、何を話したのか覚えていません。人形も手の出せるような価格ではありませんでしたが、ケースの中にぎっしり並べられた人形のうち、何体か見せて欲しいと伝えると、カピア氏は気軽に出してくれました。
私には、ギャラリーのほの暗い明かりに照らされた、人形たちを写したポストカードを購うのが精一杯でした。

極めて印象的だったカピア氏のお店以外にも、確かにそこここでアンティークドールを見た筈です。
クリニャンクールを始め、アンティークマーケットも訪ねました。しかし何故かあまり覚えていません。
3回目の訪問では、人形専門店に入ったもののやはり人形は買えず、代わりに仮面を2つ購入しました。
アンリ・ド・レニエの「生きている過去」に感銘を受けた私は、作品に登場するモンソー公園を散策したり、やたらと町を歩き回った記憶があります。
パサージュ・ジョフロアにあるグレヴァン蠟美術館にも行きましたが、美術館の出口が思いもよらない場所にあり、驚いたものでした。

私が漸くヨーロッパでビスクドールを入手できたのは、それから数年後のイタリア留学の際、ローマの骨董店で見つけた、黒いビロードのワンピースを着たアーモンド・マルセルの人形でした。
当時はフレンチ・ビスクとジャーマン・ビスクの違いもあまり良く分かっていなかったと思います。
イタリアではフィレンツェで3ヶ月程語学学校に通い、常設の蚤の市も足繁く通いました。が、それはまた次の機会に。
カピア氏のお店はいつの間にか、魔法のようにヴェロ=ドダから消えてしまったのだと聞きました。
きっとパサージュの夢の中に、溶け込んでしまったのでしょう。

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