No.0188
「罪の滴り」解読編・後編
前・中編では作品の内容について触れましたが、今回は私が作品にどう向き合ってきたかの記録です。私が今回「罪の滴り」で与えられた役は、イワオのアニマの片割れ、イズミ。
天使にしろ幽霊にしろイワオの妄想もしくは幻覚にしろ、人間でないこの役は私に合っていたのか、かなり悩みどころの少ない役でした。
お芝居というのは、人間同士のやり取りから生み出される感情や感覚のせめぎあいだの、関係性の変化だのを見せるものです。
しかし、天使とか幽霊というのは一方的に影響を与える側の存在で、相手から動かされるということはあまりありません。
(作品によってはあるかもしれませんが)
私たちへの演技指導は、稽古の初期段階での「台詞を相手にかけるな」など数点のみに留まりました。
また、イズミはホムラの後についていく役回りだったので、出や台詞のタイミング等、すべて相方の松岡規子さんにおんぶにだっこでした。
更に言うと、私は今まで団体の主宰として作・演出と出演を兼ねることがほとんどだったのですが、出演だけの場合に比べて数倍のタスクを抱えることになり、毎回ひどく大変な思いをしていました。
役のことだけを考えていればいいなんて、まるで夢のように恵まれた状態だと、感動さえ覚えたものでした。
しかも私の役は台詞量も多くはなく、覚える努力すら必要ないくらいだったのです。
ですので、ひたすら役に向き合うことができました。
役のプロフィールを作るにあたり、イズミの場合重要なことは「どうやってイワオに殺されたか」(これは初期段階で野中氏にも聞かれました)、「イワオとの関係」「イワオに対する感情」この辺りかと思いました。
以下の内容は、完全に私の妄想です。
殺され方に関しては、そう難しくありません。
イワオは自分の作中の殺人犯にシンクロしないと書けないのですから、過去に書いた二作のミステリのうち、一作目の時にホムラ、二作目の時にイズミを殺している筈です。
カスミの台詞によれば、二作目の「獣事件」で被害者は滅多刺しにされて殺されている。
従ってイズミの死因は、刃物による刺殺。
死体は、以前から敷地が解放されていたこの古民家の庭に埋められた。だからイワオは発覚を恐れ、印税でこの家を買い取った・・・。
「獣事件」が描かれている「カインの末裔」は、タロットの解釈違いに端を発した殺人事件を題材にしています。
イワオはこの作品の取材の為、トート・タロットを使用する占い師でメンタリストでもあるイズミの元を訪れます。
イズミと何度か接触するうちに、第一の殺人のことで苦しんでいたイワオは、イズミに救いを求めはじめます。
しかし占い師として、人間の暗部を見過ぎていたイズミは、人間嫌悪が高じて死を望んでおり、イワオをたぶらかして自分を殺させるのです。
この魔性の人物造型は、ホムラとイズミがからかうような台詞を言い合うシーンで野中氏から「小悪魔的に」と指導が入ったことで思いつきました。
死後は非常に安らかな境地に至り、イズミはイワオに対する感謝の念と共に、自分を殺させた後ろめたさも持っていて、ホムラと共に永遠の安らぎの中へとイワオを誘おうとしています。
稽古は7月から週5日で、本番の週は毎日ありました。
ただし、稽古期間中全く順調だったかというと、そうでもありませんでした。
一度夏風邪をひき、38度以上の高熱が出ました。
幸い熱は一晩で治まったものの、一度かかってから度々再発するようになった咳喘息の兆候が。
稽古中発作が出たことも何度かありました。
直前まで薬を飲んでいましたが、何とか本番までには回復することができてほっとしました。
日頃の節制がものをいったと思います。
貴重な機会を下さった野中氏をはじめ、この公演に関わった全ての方に感謝を捧げます。

打ち上げで。撮影:野中友博氏

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