No.031
廃墟というユートピア
廃墟、そして廃墟画や荒涼とした風景を描いた絵が好きです。骨董やアンティーク好きの方にも、廃墟好きな方は多いかと思います。
古色を帯びたこれらが、かつて在ったものへのノスタルジーを惹き起こす為でしょうか。
私が初めて購入した作家ものの絵は、山下清澄氏の「イタリアの幻想III」の陶版画でした。
ローマのフォロ・ロマーノの遺跡を描いたものです。
大学時代にアルバイトをしていた出版社近くのギャラリーで購入したのですが、同じ作者の着色銅版画の「ノスタルジア」の方は予算オーバーだったので、陶版画で我慢しました。

この方の絵特有の、彫像のような女性が横たわっているのがまた良いのです。
廃墟画や風景画には人物の姿があって欲しいけれども、人物はあくまで風景の一要素であって欲しい。
もしくは風景に溶け込むような、生気の無い姿であって欲しい。
以前ブログに書いた(→こちら)マックス・エルンストの「沈黙の目」なども理想的。
他に好きな廃墟画家、風景画家を挙げると、モンス・デジデリオ、クロード・ロラン、ジョバンニ・バッティスタ・ピラネージ、ユベール・ロベール、ウィリアム・ターナー、ジョン・マーティン、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒなど。
17~19世紀のイギリスでは、イタリアやフランスの文化を学ぶ所謂「グランド・ツアー」が流行しました。そして彼らは古代ローマやイタリアに対する憧れを、ピラネージやロラン、ニコラ・プッサンやサルヴァトーレ・ローザ等の描き出す廃墟画や風景画と共に持ち帰ったのです。
それらの絵は文字通り「ピクチャレスク(絵のような)」と呼ばれ、イギリス式風景庭園の中に再現されます。
人口廃墟やグロッタ、神殿など、「フォリー」と呼ばれる装飾用の建造物。時にはそこに隠者を住まわせることもあったとか。
ピクチャレスクからヌミノーゼまで話を広げるとなると長くなりますので、又の機会に譲りますが、ユートピアとしての廃墟に心を遊ばせるのに、一幅の絵はうってつけではないでしょうか。
ロサ・アンティカには残念ながら現在廃墟画はありませんが、ジョン・マーティンとターナーの銅版画がございます。
良かったらご覧になってみて下さいませ。


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